花のお江戸は本所・亀沢町のとある長屋に、大仏の千次という岡っ引きがすんでいました。この千次親分、捕りものの腕はさっぱりで、これまで、手がららしい手がらをたてたことがありません。そのぶん、むすこの百太郎がまァよくできた子で、おやじ顔まけ。寺子屋の師匠秋月先生をはじめ、友だちのお千賀ちゃんや寅吉と協力して、悪人を向こうにまわしての大捕りものを演じます。
捕物帳です。
やはり特徴的なのは、少年が主人公というところ。
少年探偵ものなのです。
小学生のときに読んで以来読みますが、やはり変わらず面白いですね。
連作短編でもあり、登場人物たちの成長や話のつながりなどが楽しいものとなっています。
お千賀や寅吉、秋月先生など、おなじみのキャラクターの登場もなつかしい友人に会ったような気分で読みました。
父親の千次は頼りないのですが、それを助ける知恵に長けた百太郎は、子どもにとっては憧れの存在でしょう。母のいない百太郎は父親を支える存在として、事件解決のために奮闘するのです。
作者の那須正幹さんは、幼い頃、少年探偵団を読んでいたということで、百太郎がさらわれたときなど七つ道具を持っていることなどは、やはり影響を受けているのでしょう。また、「三番蔵」などは「モルグ街の殺人」を連想させるトリックで、作者がミステリ小説に造詣の深いだろうことが容易に想像されます。ズッコケシリーズでもミステリ作品がかなりありますし。
また、江戸時代の風俗なども勉強になり、江戸の子どもたちがどのようなお菓子を食べていたかなんかがわかって楽しいですね。子ども心にこのお菓子(文字焼)の話なんかはとても印象に残ったらしく、三十年ぐらいずっとホンモノを食べてみたいなあと意地汚く思い続けています。
シリーズの他の作品もすぐに読んでみたくなりました。
PR