宇宙バトロール軍士官候補生ラリー・スタークは、練習生として宇宙練主戦カーデン号に搭乗し、アルファC第四惑星を目指していた。アルファCに到着したものの、そこでは植民地政策に反対した現地人が、革命を起こそうと激しい動きを見せていた・・・。
R・シルヴァーバーグのデビュー作。しかも、少年向けのもので、非常に面白かった。
読んでいて何を一番に連想したかというと、『
機動戦士ガンダム』です。
行政官を送り込み植民地を支配しようとする地球、課税などに苦しみ植民地支配からの解放を目指す惑星たち・・・。
父が宇宙パトロール軍の司令官である主人公のラリー。
これまで受けた教育から、彼は地球を信奉していますが、途中からどちらが正しいかわからなくなってしまいます。アメリカの作家だから、当然、植民地側につくのだろうなと思っていましたが、
単純にそんな話ではないところがこの物語のすごいところです。
宇宙パトロール軍に入るという自分個人の夢と世間の状況の食い違いにラリーは悩みます。そして、地球と植民地でいえば、
どちらかというと地球が間違っている。でも、植民地側につけば自分の夢はかなわない。自分はどちらを選択すればいいんだという葛藤に中盤から後半にかけては、ずーっと苛まれているのです。
少年の成長物語というのがテーマとしてあって、最終的にラリーは「
なにごともじぶん自身で判断をくだし、じぶんで行動しなければならない」という父の教えを思い出し、けして自分は間違っていないと思うのです。これまで自分が教わってきた既成の価値観を盲目する人間から、一歩踏み出して自分の責任でものごとを決定していく「大人」へ彼は歩み出したのです。
最後に混迷する社会に放り出されるラリーですが、この後の彼の人生を想像しながら読者はこの本を置くことでしょう。それは、
19歳でこの物語を書いたというシルヴァーバーグの気持ちそのものだったに違いありません。
さて、この本は
SFロマン文庫という叢書の1冊目です。すてきな作品がまだまだありそうなので、また読んでみたいと思います。
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