父の転勤でQ市へ越してきた和田行夫。引っ越したその日、はがきを出そうと出歩いていた行夫が偶然出会った女の子に案内された方向へ行くと、そこはなんだかようすがおかしくて・・・。
意志の力が現実に反映してしまう奇妙な街へ越した少年が主人公です。
ここまで読んできたSFベストセラーズのシリーズの中では、もっとも入りこめた作品かもしれません。冒頭の出した手紙が明治時代から、友人の家に受け継がれていて、それを手渡されるというところには惹きこまれます。
東京から田舎へ越してきた少年が、田舎の旧弊な慣習にやるせなさを感じる。
因習の打破というのが、作品のテーマです。
「あとがき」では作者本人が、この作品のねらいを書かれています。
「昔からの家柄だとか、格式などというものが、厳然として残っている。」そのようなところが、田舎に安住できないところだと記しています。
この町の不思議なところは、意志の力が働くというところにあります。
鬼の日という不思議な慣習では、「鬼を生む人」「退治する人」の二手に分かれるのですが、行夫は「鬼とたたかう人」となり、そこで強大な念の力を発揮します。行夫は実は、強大な力を持つ存在でした。
その後、主人公は家格の高い家の三年生から目をつけられ殺されそうになったり、町の変化を望まない先生から嫌がらせを受けたりします。
ずっと身分の低かった人たちを救うスーパーヒーローものになるかと思いましたが、その後、その人たちに担ぎ上げられそうになったところで、必ずしもその人たちが戦うことが正義でもないということに気が付いてしまいます。
Q藩時代から続く家格の高い者が上という感覚。そして、その犠牲となった人たちの怨念が、この町を「ねじれた町」にしているという事実。そして、そのこと自体が権力者・権威者に利用されている・・・。この悪循環を解決する行夫のアイディアには、なるほどなと思いました。
面白かったので、同じ作者の「なぞの転校生」も久々に読んでみたい気持ちになりました。
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