好評ホラー短編集第二弾。緊迫感あふれるロアルド・ダールの表題作をはじめ、スティーヴンソン、ウェルズ、ブラッドベリ、デ・ラ・メア、フォークナーらによる、英米ホラーの傑作11編を収録。訳者によるポーの翻案をふくむ、全編新訳。
英米の文豪の傑作を読めるシリーズ第2弾。
第1弾よりも、楽しんで読みました。
○エドガー・アラン・ポー原作/金原瑞人翻案「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」
文芸部の「ぼく」は先生からおすすめのホラー小説を教わる。それはポーの小説だったが、いろいろな偶然があって・・・。
ポーの長編小説の(たぶん)編者が大好きなところを抽出した作品。「描写がすごい」というだけあって、たしかにこの部分は読む価値あるなと思ったし、訳者も気合を入れて訳したのが伝わってきます。
◎ロアルド・ダール「南から来た男」
プールでくつろいでいた「わたし」のところに老人が現れた。老人はアメリカ人の若者に奇妙な賭けを提案した・・・。
これは怖い。途中で小指を切るか切られるか、ドキドキするのも怖いけれど、最後に女の人が現れるところも怖いし、最後の一文が衝撃!表題作として扱われるのもよくわかる作品です。
○オー・ヘンリー「家具つきの部屋」
部屋を借りに来た若者は、ある女性を捜しているようだった。彼は部屋を借りて・・・。
悲しみに満ちている短編ですが、オー・ヘンリーらしい意外性のあるオチもきちんと書かれていて、短編のパターンをきちんと踏んでいるなという印象でした。
☆H・G・ウェルズ「マジック・ショップ」
マジック・ショップに入った親子。店主の男は次々に不思議なできごとを起こしてみせる。
なにが怖いのだかわからないところが怖いという不思議な小説。息子がどこかへ連れて行かれそうなそんな恐怖があり、どこかヨーロッパの民話的な恐怖を覚えます。そして、やはり
あるのかないのかわからない店舗というのがすてきですよね。
○ウォルター・デ・ラ・メア「不思議な話」
七人の子どもはおばあさんの家に引き取られることになった。そして・・・。
うん、不思議な話としかいいようのないような、解決もなにもない話です。そこが不気味なんですが・・・。
○アルジャーノン・ブラックウッド「まぼろしの少年」
大きな荷物を持つその少年を助けてあげなくてはと青年は思った。その少年の正体は・・・。
かなわなかった恋愛を思うときってありますよね?逆にもしこの人と出会っていなかったら・・・と思うこともあります。切ないラストですが、これは大人にこそわかるお話だと思いました。
◎ウィリアム・フォークナー「エミリーにバラを一輪」
町の名士の娘エミリーはが亡くなった。その家で人々が見たものは・・・。
有名な短編だそうですが、最後の真実にたどり着くまでが丹念に描かれていていいですね。そして、長らく入れなかった屋敷に足を踏み入れた時に、読者も予想はしているのですが現れる醜悪な真実に驚くのです。
○エリザベス・ボウエン「悪魔の恋人」
戦中のロンドンで、疎開先に持っていくものを取りに帰った女性。そこで目にした自分あての手紙には・・・。
ロンドンは陰鬱なイメージです。この話も重低音が流れる中で描かれるサスペンスのようで面白かったです。
◎レイ・ブラッドベリ「湖」
幼い頃に愛していたタリーを湖の水辺で亡くした「ぼく」。大人になった「ぼく」は新婚旅行でそこへ寄ることになった。そこで起きたできごとは・・・。
この短編だけ、文体が詩的で、さすがブラッドベリという感じです。しかし、断ち切るような最後の一文がやはり怖い。この男の中でなにが起こっているのだろう???
◎ロバート・ルイス・スティーヴンソン「小瓶の悪魔」
ハワイで暮らしているケアヴェはサンフランシスコで悪魔が一匹中にいる小瓶を買ってしまう。その小瓶は持ち主より安い値段で売らないといけないのだが・・・。
持ち主より安い値段で売らないといけないというルールが、主人公を苦しめていくところが小説としては巧みだと思います。どうやって、そこから逃れるのかという知恵合戦になるのですが、小瓶を手に入れなくてはならなくなるところなども実に巧みで、とても面白い小説になっていますね。
○エレン・エマーソン・ホワイト「隣の男の子」
アイスクリーム屋でアルバイトをしている「あたし」。閉店間際の店にマット・ウィルソンがやってきて「あたし」を殺すというのだ。
殺されないために、主人公ドロシーが、頭脳を絞りマットを操作しようとするところにドキドキします。アメリカのティーンエイジャーってこんな感じなのかなーと想像しながら読みました。
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