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ふしぎ図書室

民話や伝承、ファンタジーやSF、児童文学や漫画など、「すこしふしぎなおはなし」に惹かれるおじさんのつぶやき。

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『あのころはフリードリヒがいた』ハンス・ペーター・リヒター作 上田真而子訳 (岩波少年文庫)

ヒトラー政権下のドイツ。人々はしだいに反ユダヤの嵐にまきこまれてゆく――その時代に生き、そして命をおとしたひとりのユダヤ人少年フリードリヒの悲劇の日々を、ドイツ人少年の目から克明に描いた話題作。(背表紙紹介より)



 どうにも救いのない悲しいお話です。

 一度聞いたら忘れられない響きで、頭の片隅にずっと引っかかっている題名でした。
 「いた」という響きがなにか哀切を感じさせ、その通りのお話になっていました。

 世の中に知っておかなければならない事実とうものがあるのだとしたら、こういった事実がそれにあたるのでしょう。第二次世界大戦下のドイツにおけるユダヤ人差別の実態。

 一週間しか誕生日の違わない「ぼく」とユダヤ人のフリードリヒは親友として育つ。
 ユダヤ人に対する差別が激化する中でも、その友情は揺るがないが、周囲の状況がそれを許さなくなってくる。

 日常生活で偏見に満ちた視線を浴びせられたり、罵倒されるくらいまでは、まだ平常の気持ちで読めても、中盤からは胸がドキドキと息苦しくなるくらいに、フリードリヒたちユダヤ人一家は追い込まれていく。巻末についている年表が、歴史的事実として重くのしかかってくる。国外強制輸送、財産の没収、強制収容所への輸送・・・。

 最後の一行には、暗澹とした気分と絶望しかないが、ここを出発点として、私たちは平和に向けて歩んでいかなければならないのだろうと思います。大人の身勝手さかとも思いますが、どうしても子どもたちには読んでもらいたいなと思う作品です。

 この作品は3部作のひとつということで、『ぼくたちもそこにいた』『若い兵士のとき』の、残り二冊も読んでみたいと思います。
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プロフィール

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41
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男性
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1983/08/31
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ジブリとSFと児童文学とマンガが三度の飯より大好きなおじさん。

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