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ふしぎ図書室

民話や伝承、ファンタジーやSF、児童文学や漫画など、「すこしふしぎなおはなし」に惹かれるおじさんのつぶやき。

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『少年少女古典文学館7 堤中納言物語 うつほ物語』 干刈あがた 津島佑子

『堤中納言物語』には、いまに通じる個性的な人間像が、あふれる機知とユーモアで描かれている。毛虫を愛する型破りなお姫さまや、片思いに身を焦がす憂愁な貴公子などの登場人物たちが、この世界最古の短編小説集に、いきいきとした生命を吹きこんでいる。『うつほ物語』は、全二十巻という日本最古の長編物語であり、その成立、内容ともに謎をひめた新発見の魅力にみちている。天上の琴を守り伝える芸術一家四代の数奇な物語の背景に、恋のさやあてや貴族の祝祭などの王朝ロマンが、絢爛豪華にくりひろげられる。


 「堤中納言物語」といえば、やはり『風の谷のナウシカ』に影響を与えたという「虫愛ずる姫君」がまず浮かびますが、ほかの物語も面白い。いろんな評にも書かれていますが、まるで近代小説のような内容で、終わり方などもおしゃれでいい。

 「花桜折る少将」や「はいずみ」のユーモア、その他の作品のおしゃれな恋愛など、非常に洗練されたお話が多くて、読みごたえがありました。そして、ひらいたかこさんの挿画がかわいいうえにこれまたおしゃれで綺麗でよかったです。
 が、やはり一番インパクトのあるのは、「虫愛ずる姫君」でした。世間の常識に囚われた周囲の人間たちと自らの考えや生き方を自然と貫いている姫君との対比があり面白い。姫君のセリフひとつひとつが含蓄がありいいのです。

 「うつほ物語」にはびっくりしました。
 まずは異国への漂流譚となっており、世界観の大きさを感じます。
 そして、阿修羅が出てきたり、天人が空から降りてきたり、仏さまが出てきたり、すごいことになっています。そして、不思議な力を持つ琴をもらったりするなど、ファンタジー色の強い物語になっています。
 そして、音楽の持つ不思議な力の物語ともなっていて、遠い昔に、このように音楽を中心とした作品があるということに驚きです。これまで、平安の物語といえば、なにか貴族社会の恋愛の話を繰り返し繰り返し読んできたので、それ以外のところをメインに据えた話を読むことが新鮮でした。
 ただし、語り口は、作者の工夫で、原典はまた全然違うようなので、ぜひ原典の方も確認して読み比べてみたいなあと思いました。

 そして、干刈あがたさんや津島佑子さんの作品も昔から気になっているので、読んでみたいなあとこれまた思いました。
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『12のバレエストーリー』 再話 スザンナ・デイヴィッドソンほか 絵 イボンヌ・ギルバート・ナノス 訳 西本かおる

うっとりするような美しい絵とともに贈る、読む名作バレエ12選。「シンデレラ」「白鳥の湖」「ねむれる森の美女」「ドン・キホーテ」「コッペリア」「くるみわり人形」「火の鳥」「ジゼル」「オンディーヌ」「ラ・シルフィード」「リーズの結婚」「ロミオとジュリエット」心ときめくバレエの魔法の世界へ、あなたをごしょうたいします。


 キラキラする綺麗な表紙。美しい挿画もたくさんあり、めくるだけでも楽しい本になっています。有名なバレエの12のストーリーを描いた本。ここ数年、バレエの発表会などに行く機会があり、断片的に1シーンを見たりしていて、どこのどういう場面で、どのような表現だったのかに興味があり、この本を読んでみました。


ネタバレしてます。

『少年探偵 魔人ゴング』 江戸川乱歩 (ポプラ文庫クラシック)

銀座の夜空いっぱいに広がった巨大な顔。それはとてつもない事件の前触れだった。明智探偵の美しい少女助手、マユミの身に危険が迫る!


 少年探偵団に新たな仲間が加わります。花崎マユミという明智探偵の姪でこの後の作品でも活躍しています。「おねえさま」と団員に慕われますが、このマユミさんが狙われるのです。巨大な顔と巨大な音で登場する「魔人ゴング」です。


ネタバレしてます。

『香りと歴史 7つの物語』 渡辺昌宏 (岩波ジュニア新書)

古代から現代にいたるまでいつの時代も「香り」は多くの人々を魅了してきました。本書では、アレクサンドロス大王を虜にした乳香、玄宗皇帝と楊貴妃に秘められた竜脳、織田信長が切望した蘭奢待、ナポレオン皇妃が愛したバラなど香りにまつわる7つの物語を紹介します。歴史の裏に香りあり…。香りでたどる魅惑の歴史物語です。


 かつて、香りに関する美術館の展示に行ったことがあります。さまざまな香りを嗅いで、陶酔したり、顔をしかめたり、とっても楽しかったです。そして、一時期、部屋でアロマを焚くこともしていたので、書店で見つけるとすぐに購入してしまいました。

 かつて、北原白秋などの明星派の詩人を読んでいるときに、乳香とか没薬とかいう単語がでてきて、いい香りなんだろうなあと漠然と思ったことがあります。ですが、そのときはどういったものか素通りして、まったく気にはしていませんでした。この本を読んで、これらの持つ異国への憧れみたいなものが、よく理解できるようになりました。これらは、外国産の樹脂や樹液を固めたものだったんですね。

 植物製の香料というのは、いい香りがするんだろうなあ、というのはわかるんですが、動物製の香料ってどうなんだろう?と読んでて思ってしまいます。でも、「麝香」という言葉自体は有名ですもんね。ジャコウジカやジャコウネコの体内で作られるのだそうです。で、ジャコウジカの香りは「ムスク」と呼ばれる。え、ムスクってジャコウジカの香りだったの!と普通に店頭で売られている香りの中に動物製のものがあり、びっくりしました。

 ほかにも驚くことがたくさん。竜涎香(アンバーグリス)は、マッコウクジラの結石で、海岸で拾得した人は、数千万円を手にしているそうです。バラ風味の巨大な1,5メートルのパイが作られているのにも驚きました。歴史の物語としては、シャネルの5番の開発秘話が一番面白かったですね。ココ・シャネルという人の生涯にも興味を持ちました。

 日常の中で、さらに香りを味わう生活を送ろうかな、とまた楽しみが一つ増える本と出会いました。

『平安文学でわかる恋の法則』 高木和子 (ちくまプリマー新書)

告白されても、すぐに好きって言っちゃいけない?切ない恋にあっさり死んじゃう?複数の妻に通い婚?老いも若きも波瀾万丈、深くて切ない平安文学案内。


 時代によって恋愛の様態は変遷していく。
 平安時代の恋愛の様子、平安文学の恋愛の描き方のパターンなどがわかって、勉強になりました。それらを実際の作品を紹介しながら、教えてくださるのでとてもわかりやすかったし、ああ、これは読んでみたいなあという古典読書案内にもなっています。さっそく、『堤中納言物語』のリライト版を読んでいるところです。

 実際に対面するのではなく、和歌で恋のやり取りをする。ここまでは知っていましたが、和歌の代作は当たり前、本人が返事をするのはその後、など、具体的にアプローチの様子がわかり、古典の理解に役立つ本になっています。語り口も高校生向きで、やわらかい話になっており、飽きさせないので、古典がわからなくて困っている高校生諸君におすすめです。

 後宮の権力争いの話の中で、『源氏物語』の桐壺帝の桐壺更衣への寵愛についての話が出てきます。桐壺更衣への寵愛は、単純な愛情だけではなく、右大臣家の権力拡大を牽制するという読み方もあると読んで、「なるほどなあ」と思ってしまいました。解説書を読んで鵜吞みにするのではなく、こういった自分なりの解釈ができるようになるのは、いつになるのだろうかと思ってしまいます。

 前々から読みたかった『落窪物語』では、壮絶な継母・継子バトルが描かれているということで、これも読みたいですね。ますます古典に興味がわきます。

プロフィール

HN:
A・T
年齢:
40
性別:
男性
誕生日:
1983/08/31
自己紹介:
ジブリとSFと児童文学とマンガが三度の飯より大好きなおじさん。

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