忍者ブログ

ふしぎ図書室

民話や伝承、ファンタジーやSF、児童文学や漫画など、「すこしふしぎなおはなし」に惹かれるおじさんのつぶやき。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『平家物語を読む 古典文学の世界』 永積安明著 (岩波ジュニア新書)

『平家物語』は、王朝貴族社会から、中世武家社会へと大きく移り変わった時代、平家一門の人々がたどった運命を描いた語り物文学です。この本では、平清盛、知盛、祇王、俊寛、木曾義仲など10人の登場人物をとりあげ、原文にふれながら、『平家物語』の全体像と文学としての豊かさをつたえます。


 1980年発行の本ですが、色褪せず面白い。
 『平家物語』の代表的人物を10人とりあげて紹介していますが、どの人生も圧倒的に面白く、波乱万丈です

 かつて、すべて読んでみようと、原文での読破に挑戦し挫折した身としては、このような抄録の本はありがたい。原文を紹介しながら、その後に訳も掲載してくれて、たいへん読みやすい。原文を味わいながら、すいすいストーリーまで頭に入ってくる。そして、各登場人物のキャラクターが立ちすぎていてとっても魅力的なのです。

 島流しに遭い、一人だけ島に残されてしまう僧俊寛。権力へ徹底的に反抗し、時代を動かした僧文覚。悪役平清盛。悲劇の天才源義経。
 
 しかし、やはり一番の読ませどころは、木曽義仲の最期です。
 この場面は背筋がゾクゾクするほどすばらしい!
 戦が経過するにあたって少なくなっていく見方、巴御前との別れ、乳母子の今井兼平の漢気、義仲の呆気ない最期・・・。
 声に出して読むことこそ、平家物語の魅力がわかるといいますが、ほんとうにここは音読して読みたくなる場面です。そうしてこの場面に参加したくなるのです。それほど、物語に入り込んでしまうのです。

 「『平家物語』を読んでみようかなあ、でも長いしなあ」と一歩踏み出すのに躊躇している人には、入門書としてぜひおすすめしたい本です。
PR

『今昔物語集の世界』 小峯和明著 (岩波ジュニア新書)

王朝の遺族たちがゆきかう平安京を舞台に、次々に起こる謎の事件、略奪、盗賊の暗躍―。芥川龍之介の小説『羅生門』の原話をはじめ、一条戻り橋の鬼や安義橋の鬼の話、不思議な犬に命を救われた子供の話など、華やかな王朝の舞台裏でうごめく「闇」の群像をあざやかに描いた『今昔物語集』の魅力にせまる。


 やはり説話集は面白い。
 近代文学の作家のネタ本としても使われた作品集。
 生き生きと当時の人々の息遣いが感じられる古典だと思います。

 「境界」をキーワードに、「門」「橋」「坂」「樹」「窓」の五章に分けて、『今昔物語集』の世界を紹介してくれる本です。

 「門」の章では、よく話の出てくる「羅城門」に関連する話よりも、「達智門」で捨て子が白い犬に乳をもらって育てられている話がインパクトがありました。オチもなく、尻切れトンボのような話なのですが、こういったものを読むのも古典の魅力です。

 「橋」の章では、不思議なお話が紹介されています。
 鬼のつばきによって、透明人間になってしまう男の話が面白い。
 こういう不思議なお話が大好きなのです。

 「坂」の章では、やはり盗賊袴垂の話が強烈です。
 藤原保昌と袴垂の話は、高校生の教科書などにも採択されているので、ご存知の方も多いでしょう。盗賊袴垂は、死んだふりをして近づいてきた武士を殺してしまい、物品を奪ったのちに、徒党を組んで盗賊団を形成する。このような途方もないエネルギーを見せつけられると、ほんとに「すごい」と思ってしまいます。説話集の盗賊の話は、やはり面白いですね。これは、先ごろ読んだ『古今著聞集』に出てくる女盗賊の話などを読んでも感じました。

 「樹」の章では、「外術を以て瓜を食はるる語」というお話におやと思いました。不思議な術を使って瓜を増やす翁の話があるのですが、以前読んだ中国の民話に似ている。案の定、この話の原話は中国にあるということです。こういう文化的なつながりやルーツを諸外国と見つけられるのも、古典の面白さですね。

 読む量がすごそうなので、原典にあたるのは尻込みしてしまうので、こういった紹介してくれる本や抄訳本などから、少しずつ原典ににじり寄っていきたいなあと思います。

『スタジオジブリ作品関連資料集Ⅲ』 スタジオジブリ責任編集

企画原案、制作レポート、プレス・シート、オリジナル・イラスト等、初公開の内部資料を始め、映画がスクリーンに映し出されるまでの貴重な関連資料を集大成。「魔女の宅急便」「おもひでぽろぽろ」を収録。


 『魔女の宅急便』『おもひでぽろぽろ』という比較的女性向けの二作品が収録されている資料集です。宣伝も女性をターゲットにしていて、そのあたりを見るのが興味深いです。この二作品でスタジオジブリ作品は国民的人気を獲得したのでしょうね。子ども向け・アニメファンのためではない、一般の人向けの映画という認識です。

 『魔女の宅急便』の制作では、当初、若手監督・脚本家の起用をするはずが、最終的には宮崎駿さんが、監督をしちゃうという経緯があり、そこも驚きです。白羽の矢が立った人物は今や有名なアニメ監督になってらっしゃいます。

 『魔女の宅急便』当時の「ミセス」という雑誌のインタビューで宮崎駿監督は、自分が感動した漫画のことを話していて、これが興味深い。そこに諸星大二郎の名前が挙げられていて、諸星ファンの僕としては、とてもうれしかったです。『孔子暗黒伝』『オンゴロの仮面』の二作品が挙げられています。もちろん、「漫画の神様」手塚治虫の名前も挙げられています。

 『おもひでぽろぽろ』では、多くのタイアップが行われており、ミシンメーカーやカゴメとのタイアップ広告など、時代性が感じられて楽しいです。プレスコ方式の説明や紅花畑の写真、そして高畑勲監督のこだわりぶり!作品を作り込んでいく過程が見えて、今度見るときはまた別の見方ができそうです。

 そういえば、この二作品、主題歌もすばらしいですよね。ユーミンの「やさしさに包まれたなら」、都はるみの「愛は花、君はその種子」。今日はこの曲をかけて寝ることにします。

『古典がもっと好きになる』 田中貴子著 (岩波ジュニア新書)

学校で習う古文に興味がもてなくても、実は古典はおもしろい!オカルトあり、恋愛ありのわくわくの宝庫から、おなじみの作品をわかりやすい現代語訳で紹介。自称「古文おちこぼれ」だった国文学者が、奥深くて不思議な古典の世界の楽しみ方、文法にしばられない原文の読み方を案内します。


 多くの子どもたちが「苦手」意識を持っている古文。
 なぜ学校で学ぶ古文が難しくつまらないのか、というところから、この作品はこういうところが面白い、こういう作品もあるよ、と古典の面白さを伝えてくれる一冊です。

 文法偏重、教育的な内容でなければならない、という学校教科書でしか古典を知らない人への、古典の魅力発信の書となっていて、これも読みたいあれも読みたいという気にさせてくれます。

 具体的には『徒然草』『百人一首』『堤中納言物語』『土佐日記』『しんとく丸』『能・狂言』という作品を紹介してくれています。

 『徒然草』では、「京に鬼になった女がやってきた!」という噂話に振り回される兼好や京の人々の様子が描かれていて、面白い。強烈なオチがついている『花桜折る少将』も、笑える部分が多々ありそうでいい。

 一番惹かれたのは、「説教」の章です。好きな森鴎外の「山椒大夫」は説教の作品の翻案だと読んでびっくりしました。貴種流離譚の物語「しんとく丸」は筋を読むだけでも面白い。また、近藤ようこのマンガ『説教 小栗判官』も「これは面白い!」と思った記憶があるので、ぜひ説教は読んでみたいものです。観音様が大きな役割を持って登場するのですが、この観音様の行うことがよくでたり、悪くでたりしてとても興味深いです。

 古文を敬遠している人にぜひ読んでほしい本でした。

『となりのトトロ』 詩・中川李枝子 絵・宮崎駿

数々の賞を受賞し、日本中を感動の渦に巻き込んだアニメ映画『となりのトトロ』。その原作者でもあり、脚本・監督を担当した宮崎駿の絵と、いやいやえんぐりとぐらなどで著名な児童文学作家の中川李枝子の詩が、なつかしくもあたたかい世界をかたちづくっている。


 宮崎駿監督自身の絵に、『ぐりとぐら』などの作品も書いている中川李枝子さんが詩をつけています。読後にとてもやさしい気分になれました。

 それにしてもトトロというのは、初めて目にしたときには、絶対に「なんだかよくわからないもの」に見えるはずです。なんたって、「おばけ」・「ばけもの」なのですから。そういった新鮮な感覚を、この絵本で読むと得られることができました。映画で見たようなストーリーはなくて、ここにはトトロやススワタリやネコバスとの暮らし・日常があって、トトロという作品のすばらしさを改めて感じます。

 特に大好きなのは、「姉と妹」という詩です。
 メイとサツキ。それぞれの立場から描かれる二人の姿があり、最後に何年経っても姉は姉、妹は妹、「あきらめて なかよくしよう」と結ばれていて、なんだか微笑ましいです。

 「さんぽ」は中川李枝子さんの作詞ですが、その詩も載っています。
 ただし、2番以降はぜんぜん違い、そこだけ読めただけでも、よかったなあと思います。もっとたくさんの生き物が出てきて、元気に満ちています。

 巻末の見返しには、おそらくトトロのいる大楠の木の現在の姿であろうものが描かれています。道路やマンション、住宅に囲まれて天高くそびえています。
 その姿を見ると、「このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん。」というコピーが、またまた胸に静かにしみこんできます。

プロフィール

HN:
A・T
年齢:
40
性別:
男性
誕生日:
1983/08/31
自己紹介:
ジブリとSFと児童文学とマンガが三度の飯より大好きなおじさん。

カテゴリー

最新記事

RSS

リンク

P R