滑走路にタイヤをきしませながら、ジェット旅客機が到着した。その瞬間、あたり一面がバラ色に輝き、旅客機は跡形もなく消え去った!
旅客機の乗客と共に見知らぬ場所へテレポートした映二は、附近の様子を調べるため探検に出た。驚いたことに、氷河期の猛獣サーベル・タイガーやナウマン象がいる。ここは20万年前の世界だったのだ。その時、突然映二に襲いかかった黒い影は・・・・・・。
一瞬のうちに物質を転送するオメガ粒子を浴び、過去へ飛ばされた少年の不思議な冒険を描くSF長編傑作!
先日、『日本SF誕生』という本を読みました。そのときに第一回目のハヤカワSFコンテストの入選作「時間砲」を原型として、ジュブナイルの本作が書かれたということを知り、読んでみました。なんだか
懐かしい感じに包まれました。
オメガ粒子を浴びるとその物質は消失してしまう。
どこへ跳んでいくかというと、それは過去や未来である。
そして、それが
タイムマシンの開発に繋がる。このあたりが面白かったです。
西条博士の研究所が根こそぎどこかへ跳ばされてしまい、そのあとにむき出しの地面が残されている場面は、楳図かずおの
『漂流教室』だ!と思いました。
心正しい主人公が、正しい行いをするであるとか、教訓的であると、なんだか大人としてはホッとします。この作品では、お金持ちのロックチャイルドという人物が最後まで自分勝手な行動と黄色人差別を行いますが、主人公たちはそれに負けず、正しい行いを続けようとします。ジュブナイルを読んでいて、心地いいのはそのようなところで、世界観が悪に曲がらない、
勧善懲悪であることに安心感が抱けるところでしょうか。
タイムマシンを奪って逃げたライアン教授はどこへ行ったのでしょう。どこか未来か、過去へ消えてしまったのでしょうか。犯人については、まあ、そうだろうなあという予想があり、意外な感じはしません。
タイムマシンで現代へ戻る途中で、ヤマトタケルに出会ったり、武士に出会ったり、米軍に出会ったりします。特にヤマトタケルの言葉が印象的で、昔の人は
「ハ行」を「パ行」で発音していたというような日本語学的なところを取り入れているところが面白いと思いました。
同時収録の「霧の中のとびら」も
時間テーマもので、第二次世界大戦中の戦闘機「疾風」が校庭に現れるというものです。こちらも平和の祈りが作中にあって、読むと胸にぐっとくるものがあります。
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