井本由紀、小松左京、さねとうあきら、カート・ボネガット、フレドリック・ブラウンなど、パラレルワールドを描く短編を収録。
未来世界をテーマにしたアンソロジー。
そして、編者は「癒しと再生」がテーマだとあとがきで書いています。
表紙や挿画は漫画家の遠藤浩輝で、SFテーマのアンソロジーにはぴったりだと思いました。
これで、このアンソロジーシリーズはすべて読破。
次はなにを読もうかなあと思案しています。
○井本由紀「地球からの手紙」
火星の大統領へ査察官からの返答の手紙。
英国の手紙コンクールで第一位を獲得した作品だそうです。着想がすばらしいですね。
◎小松左京「お召し」
三千年前の人間が書いた手記が発見された。そこには古代文明の存在の証拠の意味合いとこの世界の秘密が書かれていた。
通算で読むのは4,5回目となるのですが、何度読んでも面白いです。この作品を原案とした萩尾望都の作品も読んでみたいなあ。
○さねとうあきら「むぎひとつぶ」
海がすべてを呑み込んだ世界で、アムング共和国だけは生き延びた。アムング共和国で一番重い罪は吸い過ぎることだった。
管理社会の様子、この世界のタブーなど、未来SFの面白さがさまざまありました。ラストも心の落ち着くもので、この作品の絵本バージョンが読みたくなりました。
◎カート・ボネガット「武器なき世界」
大学院の指導教授であるバーンハウス教授は、超能力を発動させることができた。戦争嫌いの教授はその力を平和利用しようとするが・・・。
「バーンハウス効果に関する報告書」という題名で読んだことがある作品です。世界への平和の願いやバーンハウス教授の強大な力、そして、その思想や力が広がっていくところに、人類の願いが込められていて、すばらしいなあと思いました。惜しむらくは、子ども向けの文章にあまりにもなってしまっているがために、少し物足りなさが残るというところでしょうか。
◎フレドリック・ブラウン「ウァヴェリ地球を征服す」
それは、ラジオの異変から始まった。やがて、地球の侵略者は電気すら人間に使わせなくなってしまったのだ。
電気のない世界・・・。「サバイバルファミリー」という映画がそうじゃなかったかな・・・。この話では蒸気機関に代替を求めて、政府主体で文明を立て直していくところが描かれていて、非常に面白かったです。さすが、フレドリック・ブラウンという感じの短編でした。
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