一軒の家がぱあっと燃え上がりました。月ちゃんの家のようです。「やったぞう」 だれかがそう言って、住宅地の方からかけもどってきました…。町内が団地と住宅地にわかれて戦争に! 71年講談社刊の新装版。
いやあ・・・。議論を呼びそうな作品です。
始まりは、男の子と女の子という問題意識から。
次に団地と住宅地の優位意識に話が進み、互いの嫌がらせから戦争へと発展していきます。
筒井康隆らしい
容赦のなさが、幼年向けの絵本にも発揮され、後半は爆破で人がバラバラになってしまったりして、たいへんです。包み隠さない戦争の恐ろしさというものは、いったいなんなのか。どう子どもたちに伝えるべきなのか。それを考えてしまいます。
ちなみに僕は小学生の頃、「はだしのゲン」で原爆の被害の描写を
これでもかと思い知らされているので、戦争や原子力の軍事利用には絶対反対!という立場です。
テレビで戦争の様子を見るシンスケくんは、戦争の表面的なかっこよさやおもしろさに惹かれて外に出たところで、友人や親がすべて死んでしまうところを体験してしまうわけです。「東海道戦争」や「48億の妄想」と同じような問題意識がここにはあると思いました。
最近、『筒井康隆、自作を語る』という本を読みました。筒井さんは、団地のそばに住んでいたときの体験からこの物語を書いたと語ってらっしゃいました。そういうところから、ふくらんでこのような物語を作るのはすごいなあと、作家の創造力に驚きます。
永井豪の挿画もすさまじく、物語とマッチしています。「デビルマン」の残酷性、「ハレンチ学園」の逸脱性など、作風もぴったりですよね。かわいいキャラクターが残酷な目に遭っていくところは、その悲劇が(いや、すごく喜劇的なんですけど)際立っていてすごいです。
良くも悪くも記憶に残らざるを得ない。そのような
衝撃性のある絵本でした。
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