種々様々な少年少女の姿を描いた明治の文学下町の早熟な少年少女を描いた名作「たけくらべ」(円地文子訳)、別れ別れになった両親をさがすけなげな姉弟の物語「山椒太夫」など、明治の文豪の作品8編収録。
読みやすく、語釈も充実していて、非常にありがたいシリーズです。
樋口一葉・森鷗外・小泉八雲の作品を収録しています。
「たけくらべ」は円地文子訳で、樋口一葉の文そのままではないですが、遊郭の傍に生きる子どもたちの気性や悲哀が丁寧に描かれていて、面白かった。美登里と信如の淡い恋の顛末もほろりときました。
森鷗外の作品、「山椒大夫」「高瀬舟」は再読ですが、やはり面白かった。
「山椒大夫」は数奇な運命をたどる姉弟を描く作品ですが、何度読んでも最後で
喜びと悲しみの入り混じった不思議な気分になります。
「高瀬舟」は中学校の授業で読んだのですが、衝撃でした。
現在にも十分通じるテーマの作品で、主人公喜助のキャラクターの描写が読んでいて改めてすごいなと感じ入りました。
「最後の一句」は、「お上のことには間違いはございますまいから。」という言葉が
剃刀のような切れ味があって、心に残ります。そして、役人のその後の感情も理解できて、複雑な心を残したまま読み終わります。これも、軍医であり当時のエリートコースを歩みながらも文学者であるという複雑な地位にある森鴎外だからこそ書ける作品だったのでしょうか。
「羽鳥千尋」も初読でしたが、このように生きた青年が、若くして死んだ、ということそれ自体が胸を打ってきます。生の終わりから遡って、青年の懸命な生き方を青年自身の筆で読む。そこには志の中途で人生を奪われる悲しみが常に流れていて、いっそう
青年の生が際立ってくる。読んでいる間、自分の生き方を振り返らざるを得ませんでした。
小泉八雲の作品はどストレートな「耳なし芳一のはなし」「むじな」「雪おんな」の三篇。
これも名作だけあって、何度読んでも面白い。特に耳なし芳一は何度読んでも怖くて
痛い。「雪女」は登場から去り際まで尊いほどに
美しい。
イラストふんだんの注釈、文に添えた注釈など、読者に優しく読みやすく、ずぼらな僕に
名作を身近に楽しめるものにしてくれるいい作品集でした。
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