世界的な民話採集者ルース・マニング=サンダーズがよりすぐったさまざまな巨人のお話。強く手ごわい巨人もまぬけな巨人も登場する各国の民話を収録。
すっごく面白い本でした。
民話に巨人はつきものですが、巨人退治譚というのは、すごく興奮しますよね。
イングランド、デンマーク、アイルランド、スコットランド、ドイツ、ノルウェー、ルーマニアというヨーロッパ中の巨人のお話が読める本となっています。
冒頭は有名な「ジャックと豆の木」。
全体的な巨人の特徴としては、頭が悪く、人のにおいに敏感、人を食べるというものですが、この巨人も特徴を備えています。そして、だいたいの巨人譚には不思議な道具が登場するのですが、
金の卵を生む雌鶏はやっぱりほしいなあ。巨人に追いかけられてからやっつけるまでのスリル感は小さなころから変わらないですねえ。
特に面白かったのは、「大男ごろしのジャック」です。これは連作短編ともいえる作品で、何人もの巨人を葬っていくジャックの話です。しかも、巨人を倒すたびに経験値を積んでレベルアップしたうえに、アイテムまで手に入れるという
RPG的展開。「なんでもわかる帽子」「好きな場所にひとっとびでいけるくつ」「なんでも切れる刀」「すがたを見えなくする上衣」など、便利な道具を手に入れ大暴れです。ものすごい爽快感。
また「心臓を体につけていない大男」では、心臓を別の島にかくしてあり、それを探し出して切り裂くと巨人が倒せるという複雑な行程。しかも、その間に恩を与えておいた動物たちが恩返しをいくつもしてくれるというたいへん伏線も張ってある展開。
激アツなストーリーでお気に入りです。
食われるという原初的な人間の恐れ。そして、それが人間の似姿である巨人であるというのがさらに恐怖を倍増させます。怖ければ怖いほど、巨人を倒すことにカタルシスが感じられる。アニメ・マンガの『進撃の巨人』が難解な展開を迎える中、こちらは単純なお話で
モヤモヤ感を吹っ飛ばしてくる作品集でした。
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