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ふしぎ図書室

民話や伝承、ファンタジーやSF、児童文学や漫画など、「すこしふしぎなおはなし」に惹かれるおじさんのつぶやき。

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『八月の金貨』 山中恒・作 松本大洋・絵 (あかね創作文学シリーズ)

1945年8月14日、敗戦の前日にタイムスリップしてしまった研治と信子は、少年時代の信子の父親に出会った。


 いじめ戦争宝探しタイムスリップ・・・。
 さまざまなものを内包した物語になっています。

 小学生のときに読んだ本を再読です。
 表紙は強烈に記憶があったのですが、挿画が松本大洋だったとは・・・。
 高校生のときに、「ピンポン」にはまって以来の松本大洋ファンですが、その前にすでに出会っていたのだなあと感慨深かったです。





 僕は読んだはしから内容を忘れてしまうほど記憶力がないので、初読くらいの新鮮さで物語にのめり込んでいきました。

 自分ではそういうつもりでなかったのに、相手はいじめと認識していた・・・。主人公の研治がショックを受ける場面から始まります。厳しくなった今であれば、相手がそう感じている時点でアウトになる案件です。このいじめの件は、研治のおじさんが集団疎開で行っていたいじめとも重なって描かれています。

 さて、物語はサッカーのコーチである青年の実家のある今谷村へと舞台を移します。そこには、大泥棒が袋いっぱいの金貨を持って死んだという暗闇沢という場所がありました。金貨を探しに出かけた研治といとこの信子は、崖下に落ちたことで、タイムスリップをしてしまい、終戦前日の日に行ってしまうのです。

 戦時中の日本の描き方はホラーです。理不尽です。集団疎開で行われるいじめの実態。気に食わないことがあれば、しこたま殴る教師たち。まるで、ディストピアの世界に連れて行かれたような、恐ろしい場所がそこにありました。やはり、戦争というものは、怖い。現代から見れば、狂気の世界のように思えます。

 そこから脱出して、現代という世界を見てみると、我々のいる世界のなんと恵まれたことだろうと思ってしまいます。そして、戦争というものが行われない世界が一番だなと改めて思うのです。

 さて、真面目なことばかり書きましたが、全体的にはユーモアにあふれていて、楽しく軽やかな筆致で事件は進んでいきます。そして、研治と信子が金貨につけた印が、彼らが時空を超えた証にもなっているのです(ここは忘れっぽいの僕の記憶にもきちんと残っていました!)。宝探しやタイムスリップなど、少年の心を浮き立たせるものといじめや戦争といった胸に迫ってくるものが同居したすてきな作品となっています

 山中恒さんの別の作品も読んでみたくなりました。
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プロフィール

HN:
A・T
年齢:
40
性別:
男性
誕生日:
1983/08/31
自己紹介:
ジブリとSFと児童文学とマンガが三度の飯より大好きなおじさん。

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