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ふしぎ図書室

民話や伝承、ファンタジーやSF、児童文学や漫画など、「すこしふしぎなおはなし」に惹かれるおじさんのつぶやき。

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『少年探偵 黄金豹』 江戸川乱歩 (ポプラ文庫クラシック)

東京都内に、まぼろしの「黄金豹」が現れるという、奇怪な噂が広がっていた。光り輝き機敏に動く豹が、ふいに姿を見せては、高価な美術品や宝石を盗み荒らし、あとかたもなく消えるというのだ。名探偵明智小五郎と小林少年は、事件の謎を突き止めるため捜査を開始する。果たしてまぼろしの豹の正体はいかに・・・。


 黄金に輝く豹が、街中を闊歩し、宝石などを盗むという事件が起きます。

 大型獣が町中に現れるという一つの想像力の型が、乱歩作品にはあるようで、少年探偵団シリーズにも何度も登場するモチーフとなっていますね。




銀座の大通りに何度も現れる黄金豹。一年前の夏、東京旅行で銀座へ行きましたが、あの賑やかな通りを黄金豹が悠々と歩くのを想像してしまいます。すてきな白昼夢です。

 怪しげな「ネコじいさん」が登場するなど、物語の初めから怪人物が裏にいることが暗示されています。そして、少年探偵団にも魔の手が忍び寄るのです。団員の園田君の家に黄金豹が現れ、人間の言葉でしゃべり始めます。まるで「山月記」のようです。

 黄金豹は園田君宅にある「銀のおりにはいった金の豹」をねらっていることがわかります。純金の体に黒メノウの斑点が散りばめられ、二つの目はダイヤモンドでできているのです。またまた、すごいお宝が出てきました。

 その後、絵にかいた豹が実際に生きて動き出したり、応接室にある豹の剥製が生き返り動き出したりするなど、奇妙なできごとが頻発します。小林君の機転によって、お宝を奪われるのは阻止されますが、犯人は逃げ出してしまいます。そして、例のごとく屋根の上へ逃げるのです。最終的には、銭湯の煙突に上りきって逃走してしまうのですが、ほんとうに怪人は高いところが好きですね。

 黄金豹は、夜中に小林少年を脅しに来ますが、「ウヘヘヘ・・・・・・、小林のちんぴら、よくも、おれをひどめにあわせたな。おぼえていろ。きっと、このしかえしは、してやるぞ。」と非常に読み覚えのある口ぶりで話しかけてくるのです。

 そして、今度は列車で盗みを働く黄金豹。電車の屋根を歩く黄金豹など、ビジュアル的にすばらしい妄想です。そして、間髪置かず今度はインドの仏像の本尊の額にはめこんであったいわれのある宝石を狙いに来るのです。

 その後、豹の皮をかぶった明智探偵と豹の皮をかぶった犯人の格闘シーンがあるなど、安心する暇がありません。犯人を追っていくと、「ネコじいさん」だけではなく「ネコむすめ」や「ネコ夫人」が登場するなど、もう目が離せません。豹の皮をよく訓練された犬にかぶせているというトリックにもある意味びっくりしましたが、二十面相とばらされてから捕まるまでの時間の短さにもびっくりします。

 というわけで、シリーズ中でも『鉄塔王国の恐怖』とともに、けっこう振り切った作品となっていると思います。しかし、この奇妙な味わいもけっこう癖になるんですよねえ。
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プロフィール

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A・T
年齢:
41
性別:
男性
誕生日:
1983/08/31
自己紹介:
ジブリとSFと児童文学とマンガが三度の飯より大好きなおじさん。

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