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ふしぎ図書室

民話や伝承、ファンタジーやSF、児童文学や漫画など、「すこしふしぎなおはなし」に惹かれるおじさんのつぶやき。

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『若い兵士のとき』 ハンス・ペーター・リヒター作 上田真而子訳 (岩波少年文庫)

17歳で入隊してから20歳で敗戦をむかえるまで、〈ぼく〉が実際に参加し体験した第2次大戦の生々しい姿。「あのころはフリードリヒがいた」「ぼくたちもそこにいた」に続く3部作の完結編。


 三部作ということですが、厳密には、全二作とは直接的なつながりはないようです。
 もっと、大人向けの描写になっていると思います。

 短い断章が、年代ごとに続いていくだけとなっています。
 思い出を並べた。それだけを提示されているような気になります。





 戦争の悲惨な現実を描いた作品です。
 前回は三人の友情を描いた作品でしたが、今作の主人公は孤独です。

 戦争で人間性が失われていくようすが、つぶさに語られています。
 そして、そこでは、人間の体は簡単に損傷し、命も簡単に失われていくのです。
 戦車の防御坑の訓練のために腕を失った人、主人公も左腕を失ってしまいます。

 家に帰ると、普通の生活もどんどん失われていっているのを知ります。家に帰るたびに、暮らしは悲惨になっていくのです。戦場も日常の暮らしも、蝕んでいくのが戦争だと、この本を読んで改めて知ることができます。

 前回までの作品は、ドイツでの暮らしが主でしたが、今回は戦場の様子が描かれています。戦場の不衛生さ、理不尽な命令、罪ない人々が殺されていく様子、兵たちの良心がなくなっていく様子。普通の人々が普通でない精神の状態に陥っていく戦争・戦場というものにやはり恐怖を感じるのです。

 著者は初めにエラスムスの言葉を挙げています。
 「戦争を好むのは、戦争を知らないものだけだ。

 読んでいる間、ずっと息苦しく、読んだ後も、そこから解放されることはありませんでした。このような時代がまた訪れないために、自分に何ができるのかを考えてしまいました。
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プロフィール

HN:
A・T
年齢:
41
性別:
男性
誕生日:
1983/08/31
自己紹介:
ジブリとSFと児童文学とマンガが三度の飯より大好きなおじさん。

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