あやしい老人の後をつけて奇妙な様館にたどりついた少年探偵団員の相川泰二。そこで泰二の目に飛び込んできたのは、ぐるぐる巻きに捕えられた美少女だった。少女を助けようと洋館へ忍び込んだ泰二に、妖怪博士の魔の手がせまる!怪人二十面相、恐怖の復讐劇。
少年たちに本気で復習を企てる二十面相が愛しくなってくる作品です。
明智探偵も二十面相も稚気に満ちた行動を見せるのですが、永遠に子ども心(センス・オブ・ワンダーといってもいいかもしれない)を失わない、江戸川乱歩の性格が反映されているのでしょう。
今回の小林少年は貧しい子どもに変装しています。言葉を選んで書きましたが、この本を子どもさんに読んでもらうときには、
現在使ってはいけない用語をきちんと教えてあげる必要がありますね。最新の版にはついていたりするのでしょうか?
探偵小説らしいロマンに満ちあふれた作品で、石膏像の中から子供が出てくるシーンなどは、ホームズの作品を思い出します。また、天井が上から落ちてきて潰されそうになったり、床がパカッと空いて、地下に落とされたり、鎧兜がしゃべり出したりと、
忍者屋敷の様相を呈する家などすてきな仕掛けがたくさんです。
二十面相の隠れ家は古い洋館と決まっています。僕の好きな
『建築探偵術入門』(東京建築探偵団)にも、「西洋館の異物性」に触れられていて、「西洋館はロマンチックな憧れのイメージと、他方では不可解な怪しいイメージとをあわせ持つ」と書かれており、「後者が働けば、怪人二十面相は必ずトンガリ屋根の古びた洋館に潜む羽目になった。」と言及してあります。二十面相の隠れ家が登場する度に、この指摘を思い出しました。
ハイライトはついに人間外に変装するようになった二十面相。
大コウモリに変身し、子どもたちを怖がらせては悦に入っています。部下とともに大コウモリに変身し、警官隊や明智探偵、少年探偵たちとの乱戦の展開は、頭がごたつくぐらいに大興奮です。
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